ハード・ソフトを問わず、システム開発には企画から始まり、設計、試作、生産の各工程とその評価・検査工程があります。
設計工程は、全体構想から詳細設計へと、全体から部分へと移行していくのに対し、出来上がっていくのは部品などの構成要素からそれらの組立という順であり、部分から全体に向かいます。それにつれて評価や検査もその流れで行われます。
これを表したのが図1に示すV字プロセスで、左側が設計、右側が評価・検査の業務です。高さは対象を表し、それに対する設計業務と評価業務が対応していることを示します。
(なお各ステップにおける項目・内容は一例であり、実際には対象システムや開発環境により様々なやり方があります。)
図1.製品開発におけるV字プロセス
表1.各ステップの例
ステップ | 概要 |
開発企画(要求の定義) | 市場調査・分析の結果を整理し、開発目標を設定する。 |
システム構想(モデル構築) |
目標実現のためのアイデア構想を行い、全体構成を決定する。 |
システム設計 |
構想を実現するための全体構成とその具体的手段を決める。 |
構成要素開発設計 |
必要に応じてサブシステムに分割し、さらに各構成部分の設計を行う。 |
構成要素開発設計の評価 | 設計に基づいて製作された部品・材料に対し、基本性能評価や特性項目の確認を行う。 |
システム評価 |
試作されたシステムに対し、基本性能や機能の評価を実施する。 |
実証テスト | 量産と同条件で製作されたシステムの評価を行う(安全性、環境などに関する各種試験を含む)。 |
市場投入 |
この図はよく知られているのですが、特にハードウェアの場合、単純に業務の流れとみなすと間違いです。
例えばシステム設計に対して、後工程(構成要素の詳細設計、製作、組立)を経て全体を作ってから確認テストを行うように見えますが、これでは各ステップでの作業はやりっぱなしになってしまいます。これは設計の評価とは言えません。確認テストの結果、動作しない、仕様を満たさない、騒音が発生するなどという問題が発生しても、その原因がすぐにはわからず、対応に長時間かかってしまいます。
そうではなく、各工程ごとに評価を行っていくのがあるべき姿です。言い換えれば設計とその評価は一体のものにしていく必要があります。
特に上流の設計段階では、どのように評価するかが非常に重要な問題です。
ここではそのポイントを3つ挙げておきます。
1.シミュレーションと実物による機能の評価
設計段階では、構想モデルを数式化することによりシミュレーションによる評価が可能になります。
シミュレータが実物を完全に再現できなくても、相対的な比較ができれば実施すべきです。設計条件を変えながら結果を予測し、より良い設計にしていきます。
試作品を製作する段階では実物の計測が主体になります。数多くの試作品を作って評価するのは効率が悪く、コストもかかるため、最終確認として行うことが理想です。
2.直後の工程による評価
相前後している二つの工程は当然ながら関連性が強いので、直後の工程からフィードバックを受けるのが効果的です。
例えばシステム設計は直後のモジュール設計に対して仕様を出すわけですが、モジュールが具体的イメージになった後、各モジュールを統合させて全体システムの成立性の評価が可能になります。
3.未然防止の観点からの評価
製品開発におけるトラブルは、目的とする出力が不安定になる、ノイズや副産物が発生する、部品の一部が壊れたり脱落したりする、システムが暴走する、など様々なパターンがあります。
これらの問題は、開発が進んでから対策をとるのではなく、最初のシステム設計の段階で十分な検討を行い、設計構想に盛り込んでおくことが必要です。